
クラウンクラウンの松本です。
今回も別会社で行った工事の手直し事例です。
工事の際に電波が弱いと聞かされて、了承の上工事を行ったそうですが、たびたび映像が乱れて、視聴時間の半分以上はまともに見れずにいたようです。工事会社に問い合わせたところ、了承の上工事を行っているのでどうにもできません、と突っぱねられてしまったということで弊社に相談が入りました。

電波が悪いので受信保証しませんと念を押しているようですが…
目次
概要
実際に見てみると、アンテナを無理やり横向きに設置しているなど、電波の受信以前に改修の必要のある現場でした。
※平塚中継局からの電波は垂直偏波方式(スカイツリーの電波と90度電波の角度(偏波)が異なるため、八木式の場合はアンテナを90度傾けて使用します)であり、標準的な水平偏波方式のアンテナを90度横に倒すという考えは間違っていませんが、このアンテナは水平偏波専用のアンテナであるため、今回の取り付け方は行わないように説明があります。
※横向き設置対応アンテナや、屋内設置であれば大丈夫ですが、今回は防水や受信角度の調整の観点から、不適切な工事となっております。
今回最初に設置されていたのはDXアンテナのUAH201というアンテナです。この二つ前の機種であるUAH800は横向き設置もできる機種だったのですが、後継(UAH201の前身)のUAH810で水平偏波専用となりました。のちにUAH800のリバイバル品であるUAH805という機種が出て、横に倒して垂直偏波でも使用できるようになりましたが、現在はデザインの良さや受信角度の調整のしやすさなどを考え、垂直偏波専用のUAH201Vというアンテナが発売されています。

UAH201Vの方が一回り大きなアンテナとなっています
既存アンテナの受信状況
アンテナの受信状況は非常に不安定で、数分ごとに大きく受信レベルが落ちてしまいます。また、本来横向きに設置することを想定していないアンテナであったため、受信方向への首振りができず最適な受信ができていませんでした。
初期状態の受信レベル
アンテナの種類について
このエリアは垂直偏波の受信となっていることがあらかじめ調べることもできたはずなので、本来であれば垂直偏波に対応したアンテナを準備しておくべきところです。また、弊社で用意した垂直偏波専用のUAH201V(Vは垂直を表すverticalの頭文字だと思います)では問題なく電波を受信できるポイントが見つかりました。
最終的には小型アンテナを壁面より高く上げることで、さらにいい電波が受信できたため、小型のアンテナでの受信となっています。なお、この小型アンテナは水平/垂直偏波共用(切り替え使用可能)となっています。
無理やり横向きにつけることのリスクやデメリット
先述したUAH800やUAH805は、アンテナを横向き設置する際は、アンテナ本体を支える金具が本体の左右中心に来るようになっています。今回はアンテナの左端に固定金具がくる格好となり、アンテナの自重で傾いてしまっていました。

無理に横向きに取り付けたため、アンテナが自重で傾いてしまっていました
いわゆるアンテナの頭が下がっているため、防水(防雨)が通常より利かなくなってしまっています。
なお、アンテナ本体の裏にブースターを収納していたため、ブースターも頭が下がっており、そのまま使用を続けていては、雨によりブースターが早く壊れてしまっていた可能性があります。
取付金具も横向きになってしまっているため、本来は左右に首を振りたいところですが、上下にしか首が振れなくなっています。
測定結果
※強度(dBμV):高いほど電波を強く受けている
※MER(dB):高いほど電波の質がいい
※BER(指数表記):低いほど電波の質がいい
手直し工事前の受信状況
ch | 18ch | 19ch | 21ch | 22ch | 23ch | 24ch | 25ch | 26ch |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
強度 | 42.7 | 41.2 | 41.9 | 40.6 | 39.1 | 35.2 | 38.7 | 42.2 |
MER | 25.4 | 22.6 | 24.3 | 19.3 | 14.0 | NG | 14.6 | 21.3 |
BER | 3E-6 | 1E-4 | 0 | 8E-4 | NG | NG | NG | 1E-3 |
局名 | TVK | NHK | フジ | TBS | テレ東 | 朝日 | 日テレ | ETV |
手直し工事後の受信状況
ch | 18ch | 19ch | 21ch | 22ch | 23ch | 24ch | 25ch | 26ch |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
強度 | 46.1 | 46.6 | 44.1 | 46.3 | 48.0 | 47.0 | 46.1 | 45.4 |
MER | 29.0 | 31.2 | 29.0 | 29.3 | 30.8 | 32↑ | 32↑ | 32↑ |
BER | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
局名 | TVK | NHK | フジ | TBS | テレ東 | 朝日 | 日テレ | ETV |
電波測定結果所見
手直し前の電波に関しては、実際のところ計測値は非常にぶれていて、TVK(18ch)はなんとか大丈夫そうに見えますが、この数値で安定しているわけではありませんでした。
最終的に固定した場所での電波は、非常に良好とはいえないものの、数値も以前よりだいぶ安定しており、実際のテレビ画面でも映像の乱れは確認できませんでした。
実際にアンテナを固定するまでの間、2種類のアンテナで設置可能場所を十分に測定しております。選択肢としては、垂直偏波専用アンテナのUAH201Vを東の端に取り付ける方法と、今回最終的にお選びいただいた場所に小型アンテナを設置する方法を提示させていただきました。配線や受信の数値のバランスから、今回の場所になったのですが、最終的にアンテナの高さを確定するまでも入念に電波の測定をしております。
電波が通常よりも不安定な場所であったため、最終的な高さの判断に、手持ちでの測定ではなく実際に設置して確かめています。

長めのマストを実際に固定したうえで、アンテナを固定、角度調整を行いながら測定を行いました
すべてのチャンネルが間違いなく受信条件を満たしているかを測る必要がありますが、ここは少しのずれでチャンネルごとの状況変化が大きかったため、上図のように手持ちではなく実際に固定し、高さごとに最適な角度調整を行いながらの計測を行っています。
少しでも高い方が電波がよさそうに思われることが多いのですが、実際に測定した結果、今回はマストの一番低い位置が最良の結果となっています。

設置高さに合わせて、邪魔なマストはカットしています
今回の工事料金
今回の工事料金は以下のようになっています。
工事内容:他社アンテナ工事手直し(別アンテナ設置)
地デジアンテナ工事 | 22000 |
高所足場取り付け | 5000 |
既存ブースター移設 | 10000 |
点検口内作業 | 3000 |
梯子作業(6~7m) | 3000 |
サイドベース追加 | 3000 |
既存アンテナ撤去処分 | サービス |
工事料金合計(税別) | 46000 |
海老名市のため、出張料金を別途いただいております。
工事のポイント
工事金額を抑えるために、デザインアンテナは基本的に一択という工事会社もあります。条件があっていればそれでもいいと思いますが、今回のように機器に悪影響が出ることが確実な設置の仕方、また受信が不安定なことが分かったうえでの工事の実施は避けるべきです。
もともと垂直偏波のアンテナを用意していれば初回から問題なかったのではないでしょうか。ただし、MERやBERなど、電波測定の基本理解には疑問が残ります。
設置アンテナ
設置アンテナはサン電子のSDA-5-1、ブースターはもともと設置されていたDXアンテナのBU433D1を移設、調整して再利用しています。
弊社で取り付けたSDA-5-1の説明書は工事明細、保証書、保証規定とともにお渡ししております。
施工時間
電波調査~カウンセリング:100分
施工時間:40分
となっています。
他社施工について
工事料金
実際にかかっている料金は安かったようです。伝票、明細、領収書が別になっていますが、その後領収書は伝票と統合されているようです。
お客様のお名前が難しかったのですが、伝票にはカタカナで間違って書かれていました。
アフターサービスの顧客管理が気になるところですが、以前、保証書を無くしてしまったら保証が受けられないと別のお客様から聞いたこともありますので、無くさないように要注意ですね。
工事の内容について
ただし、いくら安くても実際にテレビが見られないのではどうしようもありません。
また、今回は横向き設置をしていることと、電波のいい場所に設置されているわけではなかったことから、既存の設置金具の再利用も同じ場所の取り付けもできませんでした。そのため、外壁に開いたビス穴を、後日ハウスメーカーに相談して補修してもらおうことを検討していました。二度手間で工事料金もかさみ、またご新築の壁の補修も必要となってしまいました。