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台風でBSアンテナがずれる!最安値のアンテナ工事が引き起こした1年後のトラブル事例

CASE
最安値アンテナ工事は品質もそれなりだった
2023年8月10日

ご依頼の経緯

1年前に設置したアンテナが台風後に映らなくなってしまったとご相談をいただきました。実は1年前に工事のお問い合わせをいただいていたのですが、相見積もりの結果「業界最安値保証」をうたう工事会社に頼んでしまったとのことです。工事にご満足されていれば、補修もその会社に依頼したのでしょうが、どうやらそうではなかったようです。また後日談として、このお客様から千葉テレビ用のアンテナ追加設置のご依頼をいただいております。今回紹介する手直しや診断、現地での説明等にご満足いただけたとのことで何よりでした。

Table of Contents

使用部材の選定について

DXアンテナのBC45AS

BC45ASは材料費が高騰する中手ごろな価格で入手できるアンテナですが、長期保証をつけて施工する場合は特にアンテナの性質について説明した方が親切ですね。
後日談として、地デジアンテナの追加で再訪問した際にBSアンテナの状況を確認しました。設置から3年でこの状態になりました。前回は火災保険を使用した原状復帰だったため、アンテナケーブルはそのままにしていました。左の黒いケーブルは再訪問時に設置したチバテレ用のアンテナケーブルです。

今回の台風で方向がずれたのは写真にあるDXアンテナ社製BC45ASです。このBSアンテナは、BC453Sの後継機種と言われることがありますが、実際は後継機種ではなく廉価品です。粗悪品ではありませんが標準機種の後継と言うには語弊があります。

リブ付きマストと小型サイドベース

なおこのリブ付きマスト(リブパイプ)はパイプの肉厚の薄さをカバーするために折り目が付いているものであり、肉厚は1mmしかありません。一般的な直径25mmのアンテナマストは1.2mm厚、当社で標準の超防錆マストは直径32mmで肉厚は1.6mmです。
マストのリブは肉薄(コストダウン)でありながら、多少強度を増すことができるという特徴がありますが、BSアンテナのように微調整をするアンテナを設置するには不適切です。
本来ならマストごと交換したかったのですが、やはりこの会社のコストカットは徹底しており、取付金具も25mm専用のもので、弊社の使う32mmのマストを挿しこむことができず断念しました。当初は金具の付け替えも検討されていましたが、コーキングがべったり塗布されていました。そのため金具を撤去する際に破風へのダメージも避けることができず、今回は金具の交換を諦めました。

25mm専用金具
25mmマスト用のサイドベースなので32mmの当社のマストは使えません

DXアンテナのCU43AS

DXアンテナのCU43AS

今回は細かい解説を省略しますが、プロのアンテナ工事業者にとって使いたくないブースターランキング上位に来る品物です。メーカーは不良ではなく雷などの影響で壊れると言い張るので、万が一の故障の場合は火災保険が適用できる可能性もありますが、あまりに故障数が多いので本来お客様にはおすすめしたくないブースターではないでしょうか。確かに安いですし、他の商品では信頼できるDXアンテナなのですが、不良交換に応じた話は聞かないのでメーカーとしてのアフターフォローにも疑問を感じています。

耐候性が謳われていない同軸ケーブル

S-5C-FB-AはJISC3502準拠のケーブルですが、この規格に耐候性を定めるものはありません

プロを含めて多くの人が驚くのですが、S-5C-FBを定めたJISC3502は

これらのケーブルは主に屋内で使用
としています。『JISC3502:2020附属書A(規定)A.1一般事項』より引用
中には独自に耐候性を持たせたものもありますが、このケーブルメーカーについていえば、他のケーブル(当社で使用しているもの)については「耐候性」と表記しているのに対し、こちらのケーブルにはその表記がありません。ただし、これも粗悪品ではないのである程度の耐久性は期待できます。
とはいえ耐候性について考慮されていない白いケーブルを使うことで「白いケーブルは耐候性がなくすぐボロボロになるので屋外で使ってはいけない」などという一部間違った情報が広まってしまうのでしょう。

台風被害の手直し

故障数の高い(おそらく出荷数が多いからということではなく、故障率自体が高いものと思われます)CU43ASが設置されていたので、まずそちらの不具合を考えました。しかし地デジは視聴できるということやその他の設置方法、工事を行った会社の以前の施工事例(何度か手直しで伺っています)などを鑑み、丁寧に点検を行いました。
この時点でブースターに問題はなく、単純なBSアンテナの方向ずれだったことが判明しました

ブースター電源の電圧を測定
ブースター電源から流れる電圧を測定しました。15Vの電圧設定ですが実際は少し高めで出力されており、ケーブルが長くなるほど電圧は下がります。

以前の地デジブースターにはDC20Vのものもありましたが、今はほとんどのブースターがDC15Vです。多少の誤差は出ますが十分問題ない電圧でした。

アンテナの高さを変更

当初設置されていたアンテナの高さは非常に高い位置でした。おそらくここまで高くしないと電波が安定しないと考えたのでしょう。しかし実際には千葉市でBS受信のための仰角(BS電波を受信する角度)は37.8度です。この角度は屋根の傾斜で使われる数値に直すと7寸8分です。一般的な屋根の4寸勾配は約22度なので、屋根の傾斜がBSアンテナの受信の邪魔になることはありません。つまりここまで高くする必要がないので、安全性を考えて低い位置まで下ろしました。本来は玄関正面でなく、南側のバルコニーにつけても良かったと思うのですが、安値のアンテナ工事会社はアンテナ線を引き回すと途端に金額が跳ね上がる場合があります。そのためアンテナの設置場所について妥協してしまうことも多いのです。
同じリブパイプで設置されたアンテナで、マストが折れてしまった事例もあります。

地デジフラットアンテナの倒壊事故
この事故を見れば、このパイプとアンテナの組み合わせがいかに不適切であったかがお分かりいただけるのではないでしょうか※リンク先の補修料金は現在の価格と異なる場合があります。

アンテナの方向調整とブースターの調整

BSアンテナを下ろした後、方向を調整し、ブースターを調整して仕上げました。
最初にアンテナを設置した時にはブースターの調整をしていなかったようです。ブースター工事代が安かったので調整代は含まれていなかったのかもしれませんね。
電波の強さと分配数などに応じてブースターのボリュームとアッテネーターなどのスイッチを調整しました。

ブースターの調整
最近のブースターにはモニター出力が付いていますので、そこで測定しながら各種調整を行います。

火災保険の適用

台風被害でアンテナが倒壊したり、方向がずれてしまった場合は火災保険の対象になることが通例です。ただし火災保険の中身にもいくつか分類があり、これは「風災」と呼ばれる被害に該当します。契約内容によっては風災に対応していなかったり、免責金額が高額、または一定額以上の被害でなければ対象外などの契約もあるようです。
また原則として原状復帰までが保険の対象になるため、今回の事例でもアンテナの移設やケーブルの張替えなど、追加費用については対象外になる可能性があります。
昨今の保険金不正請求のニュースでも聞くように、不要な作業を請求したり、料金を水増しすると大変なことになります。工事料金が2万円と謳っている会社に頼んだら、修理代金が10万円だった、でも保険で全額出るでしょう?なんてことが通るでしょうか。くれぐれも保険を使った修理の際はそういったトラブルに巻き込まれないようにご注意ください。

投稿者プロフィール

松本 昭彦代表取締役
幼少期より家電設備の工事に触れていて、15年ほどさまざまな設備工事に携わり、クレーム処理責任者を経て2011年に独立。
品質重視と明朗会計をモットーに、業界改革を目標にアンテナ工事専門会社としてクラウンクラウンを立ち上げました。

東京電機大学理工学部情報科学科(中退)
事業構想大学院大学 事業構想士修士課程


主な資格
【国家資格】
1級電気工事施工管理技士
2級管工事施工管理技士
2級電気通信工事施工管理技士補
第一種電気工事士
工事担任者(2級デジタル)
給水装置工事主任技術者
運行管理者

【その他】
第2級CATV技術者
1級あと施工アンカー施工士
インテリアコーディネーター
キッチンスペシャリスト
一級リビングスタイリスト
二級福祉住環境コーディネーター
排水設備工事責任技術者
照明士
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