年々台風の大型化や被害の深刻化が言われていますが、今回は台風が関東を直撃するかも、と言う直前のタイミングでの工事でした。
さいたま市大宮区で3階建ての新築戸建ての屋根裏に地デジアンテナを設置した事例です。
アイキャッチの画像(メイン画像)にもあるように、もともとはユニコーンアンテナの設置をご希望になっていましたが、3階建てでバルコニー以外への設置になると少し特殊な工事になります。
当社で基本の梯子は7.8mのものです(これでも少し長いほう)。
写真の一番下に梯子の先端が写っているのがわかりますか。今回は電波の受信方向が建物と反対方向だったため、ユニコーンアンテナをこの場所に設置するなら写真のように屋根よりも上まで立ち上げたいところです。
ですが、通常の梯子で作業するには7.8m付近までが限界です。
3階建てと聞いていたので11mの梯子も装備して伺ったのですが、そこまでやるよりも屋根裏への設置はいかがでしょうかという話になりました。
台風も近づいていたこともありますが、将来的には屋根裏の方が倒壊や防水の点でも心配事がなくていいでしょう、とお伝えしました。
アンテナ工事概要
- 梯子で作業ができる範囲でも電波が受信できることを確認したうえで、屋根裏での設置についても検討。
- 屋根裏で電波を測定したところ、屋外よりも良好な結果が得られた。
- 屋根裏にアンテナ線がなかったため、3階の居室のアンテナ端子からアンテナ配線を延長。
- 屋根裏にデザインアンテナを設置。
- 屋根裏にブースターを設置し、モニター出力(分岐出力)からテレビ端子まで接続。
- 浴室天井点検口にブースター電源を設置。
テレビアンテナ工事の手順
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カウンセリングと電波の確認
もともとユニコーンアンテナの設置をご希望になっていたので、ユニコーンが設置できるか電波調査を行いました。結果としてはまずまずでした。しかし受信方向が建物の内側向き(設置場所から建物に向かった方向)だったため、あまり条件がいいとは言えません。冒頭で書いたようにしっかりと受信方向にアンテナを出すには大型の梯子を使う必要があり、工事代金も上がってしまいます。
屋根裏での設置もかまわないとご確認をいただき、屋根裏で電波測定を行った結果、屋外の設置(3階壁面高さ)よりも良好な結果であったことなどをお伝えしました。 -
その他の確認と最終見積提示
分配器の場所とブースター用電源の有無、配線の状況などを確認し、工事金額やその他注意事項をご確認いただいて屋根裏への設置工事に決定しました。
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アンテナ配線工事(屋根裏への通線)※今回の山場
屋根裏にはアンテナ配線が通っていなかったので、新たに屋根裏まで配線する必要がありました。屋外の配線を引き入れるのも一つの方法ですが、それでは大型の梯子を使うことが変わらず、また軒が出ていない屋根だったので屋外からの引き込みは難しい状況です。
こういう場合は最上階(今回は3階)のアンテナ端子までつながっているアンテナ線を屋根裏まで延長し、アンテナに接続します。
まずアンテナ端子を壁から外し、ワイヤーを屋根裏方面まで伸ばし、どこに届いているのか音と感触で確認します。場所は特定できたのですが、石膏ボードを切開すると、その先は大きな梁にあたり空洞がありませんでした。おなじ柱と柱の間の空間で反対の端にスイッチ用の電線が通線されていました。その隙間分あらかじめ石膏ボードが切り欠いてあったので、そちらにアンテナ線を差し込み、部屋のアンテナ端子まで届くか試します。
ところが、石膏ボードの裏側の壁の天井部分には板が張ってありました。少し下がったところでコツコツと当たってしまいます。
電線は下まで通っているので穴かなにかはあるのですが、場合によっては電線一本分の小さな穴しかない場合もあり、そうなったらアンテナ専用の穴を新たに開ける必要があります。
態勢的にも楽ではない状態で見えにくい中よく見てみると、やや余裕のある切り欠きを確認できました。先に部屋肩ら通していたワイヤーをここから引き抜くのは難しいので、上からアンテナ線を下ろして、部屋のアンテナ端子から腕を入れて捕まえてもらうことにしました。二人作業でやっているとこういう時とても助かりますね。アンテナ工事は一人でやっている会社が多いようですが、一人でこういう通線をやるとものすごい時間がかかってしまうことがあります。屋根裏と居室の往復なんて非効率で危険ですしね。
無事線が通ったのを確認し、十分な長さを送り込みます。今回は壁の中の長さと加工に必要な長さを考えて3m引っ張り出しています。
引っ張り出した白いアンテナケーブルに別の黒いアンテナケーブルをビニルテープで固定し、今度は反対に屋根裏に引き戻します。
屋根裏まで黒いアンテナ線がとどいた後は、黒いアンテナ線だけを屋根裏で必要な分引き上げます。
ここではわかりやすく、アンテナから分配器に向かう線を黒、アンテナ端子に向かう線を白としています(もともとアンテナ端子に繋がっていた線が白いことから)。
端子側に引き出した配線はこのあと「白い線をアンテナ端子へ」、「黒い線をもともとのアンテナ端子に繋がっていた線と直結」します。
一方屋根裏では配線を固定したのち、気密のため石膏ボードを戻します。
変成シリコーンは安くないので屋内で使われることはあまりありませんが、今回は通常ビスの防水で使っているものをそのまま利用しています。
石膏ボードの切り口面にたっぷりシリコーンを塗り付けて、もともと固定されていたビスなどを使って元の位置に固定します。はみ出たシリコーンを指で慣らし、余り過ぎた部分は拭き取ります。
写真ではテープを張る前ですが、このあとテープを貼って仕上げています。 -
ブースターの設置と調整
ブースターは今回分岐の都合もあり屋根裏の中に設置しています。いざ調整しようと思ったときに屋根裏を覗く必要がありますが、中まで入っていく必要のない場所に設置できましたし、なによりこれで分岐したアンテナ端子も安定した電波が受信できるようになっています。
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テレビアンテナの設置
小型アンテナ(SDA-5-1)と今回設置したフラットアンテナ(U2SWLA20)の電波を測り比べ、今回は特にTOKYO MXの受信感度のよかったマスプロ電工のU2SWLA20を設置しています。
屋根裏の中まで入っていく必要はありましたが、受信方向の端にある柱に設置し、十分良好な電波を受信することができました。
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分配器の配線切り替え
アンテナ線を逆流してきた電波を適切に分配するために、分配器のつなぎ方を変更します。
また3階のアンテナ端子に電波を届ける必要があるため、屋根裏から分岐した配線をアンテナ端子まで配線するのですが、今回はブースターを屋根裏に設置し、そのモニター出力からアンテナ端子までつなげています。モニター出力は通常の出力に比べて少し(約20dB)弱い電波を出してくれる端子で、テスト用の端子としても使われます。分岐器が内蔵されていると言えばわかりやすいかもしれませんが、もちろんこの分岐器を単独で別途接続することも可能です。ただし余分に工事料金がかかってしまうため、現在はブースター本体の機能で賄える場合はそのようにしています。なおこの接続方法は特に問題がないことをメーカーにも確認済みです。
参考リンクアンテナの分配器の場所はどこ
黒ひげ危機一髪のようですが、どの線があたりなのか想像しながら試します。ただしここの配線には丁寧に接続先が記されていたため、簡単に探し当てることができました。
ただまれにこの表記が間違っていることもあるので、そのまま信用するのではなく参考として実際に確かめることが大切ですね。
こちらの線は今回使いませんが、将来使う場合もあるのでわきに置いておきましょう。
ダミー抵抗はつけなくてもいいのですが、ダミー抵抗をつけないと分配器の出力で電波が跳ね返り、定在波としてノイズになってしまう場合があります。そのため電波の品質がギリギリの場合はつけた方がいいでしょう。また4K8Kの受信環境においては、この分配器の空き端子の先端から電波の漏洩が起こり、Wi-FiやBluetoothなどとの電波干渉が起きる場合があるので設置は必須と考えられます。当社の場合、BS工事を行った際に空き端子があった場合は無料でこのようなダミー抵抗を設置しています。また今回のように当社の工事で空き端子ができる場合は原則としてBS工事の有無に関係なくダミー抵抗をサービスで設置しています。サービス対象でない場合でも有料で設置することもできます。 -
屋内のアンテナ端子で電波確認
各部屋のアンテナ端子で電波が問題ないことを確認します。原則として一カ所で問題なければすべての端子で大丈夫なのですが、ご新築の場合万が一ハウスメーカーの工事の際に接触不良などがあった場合もこの試験で確認できます。また今回のように分岐工事をしている場合はバランス的にも大丈夫か確認できます。
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片付け・確認・ご精算
施工場所の後片付けと清掃を行い、工事箇所を確認していただきます。(目視や写真による確認)
ご不明点などがないか確認し、ご精算を行い終了です。
※工事の手順、内容は現場ごとに異なります。
電波測定結果
LEVEL(dBuV) | MER(dB) | BER | LEVEL(dBuV) | MER(dB) | BER | ||
16 | TOKYO MX | 38.7 | 29.8 | 0 | 50.8 | 29.8 | 0 |
21 | 55.7 | >32 | 0 | 69.7 | >32 | 0 | |
22 | TBS | 56.6 | >32 | 0 | 70.5 | >32 | 0 |
23 | 56.8 | >32 | 0 | 70.8 | >32 | 0 | |
24 | 53.8 | >32 | 0 | 68.4 | >32 | 0 | |
25 | 56.8 | >32 | 0 | 69.4 | >32 | 0 | |
26 | 62.2 | >32 | 0 | 74.6 | >32 | 0 | |
27 | 56 | >32 | 0 | 67.4 | >32 | 0 | |
32 | 65.5 | >32 | 0 | 79.3 | >32 | 0 |
今回の工事料金
合計料金
今回の合計料金は 59000円(税込64900円)となりました。
内訳
- 地デジデザインアンテナ設置
- 22000円
- 地デジブースター設置
- 15000円
- 点検口内作業
- 3000円
- 屋根裏内作業
- 8000円
- 壁内アンテナ線通線工事(2本)
- 8000円
- 分配器組み換え
- 3000円
※消費税別料金です。エリア別出張費・有料駐車場料金・任意保険料金・キャンペーン割引などがあった場合は省略しています。
※夏季料金がかかる場合があります(屋根裏内作業など)。
※その他調整費用や決済手数料など根拠のない料金はかかっておりません。
今回利用した部材
弊社で取り付けた機器の説明書は工事明細、保証書、保証規定とともにお渡ししております。
施工時間
現地調査・カウンセリング:1時間30分
工事:1時間30分
後片付け・精算:40分
今回の工事のポイント
3階の壁面から屋根の上に突き出すように設置する場合は、長梯子の使用10000円や高所取り付け作業10000円がかかります。最終的にそれよりも工事料金が安く済み、台風なども気にする必要がないのはとても良い工事になったと思います。
ただし将来BSアンテナを設置したくなった場合は屋根裏で配線を組み替える作業が必要になります。そのため工事の目にBSアンテナの導入可能性がどのくらいか伺ったところ、設置する予定はほとんどない、と回答をいただいたのでこのような工事になっています。もし近い将来BSアンテナを設置する可能性があれば、もう一部屋からアンテナ線を持ち上げて、2回線をうまく使う工事にしておくのが望ましいです。また場合によってはブースターもBS対応のものもを最初からつけてしまってもいいでしょう。
後からでも追加で工事はできるので、必要があった際にはご相談いただければと思います。
他社様が追加工事で行う場合も注意点などをお伝えできますので、遠慮なさらずに連絡してくださいとお伝えしています(スカパーのキャンペーン工事を行ったり、知人やご本人のDIYで工事を行う場合など)※慣れていない方の梯子作業はお勧めしておりません。
また屋根裏の梁まで室内の石膏ボードが立ち上がっていると今回のように切り欠いて通線をするのですが、開けてみてさらにその先に板が張っている場合があります(今回のパターン)。あらかじめ他の配線が通っている場所の方が工事はしやすいと思いますので、そういった場所の見極めも必要かと思います。
- 松本 昭彦
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経歴と専門分野:
幼少期から家電設備の工事に親しみ、クラウンクラウンの設立の前に15年以上にわたりさまざまな設備工事の現場で経験を積みました。100名を超える下請け工事業者の取りまとめとクレーム処理責任者としての役割を経て、2011年に独立。品質重視と明朗会計をモットーに掲げ、業界改革を目指して高品質工事専門の「クラウンクラウン」を設立しました。
学歴:
東京電機大学理工学部情報科学科(中退)
事業構想大学院大学 事業構想士修士課程
主な資格:
国家資格:
1級電気工事施工管理技士
2級管工事施工管理技士
2級電気通信工事施工管理技士補
第一種電気工事士
工事担任者(2級デジタル)
給水装置工事主任技術者
一般建築物石綿含有建材調査者
石綿作業主任者
運行管理者
その他資格:
第2級CATV技術者
1級あと施工アンカー施工士
インテリアコーディネーター
キッチンスペシャリスト
一級リビングスタイリスト
二級福祉住環境コーディネーター
排水設備工事責任技術者
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