既存配管にスターリンクケーブルが通るか確認
まず最初に、既存の配管を使ってスターリンクケーブルを通せないか確認しました。壁の中に埋め込まれていたのは14mmの配管で、スターリンクのケーブルを通すには細く、今回は使用できませんでした。
スターリンク工事では、既存配管を使えるかどうかで仕上がりや工事内容が大きく変わります。既存配管が使えれば、新たに外壁へ配管を増やさずに済む場合もありますし、室内側の仕上がりもすっきりすることがあります。
ただし、既存配管を使える場合でも、標準ケーブルの長さでは届かないことがあります。当社では通常のケーブルだけでなく、45mの長尺ケーブルも複数在庫するようにしており、現地の状況によって長尺ケーブルへ切り替えられるよう努めています。
もちろん、使うかどうかわからない2万円前後のケーブルを常に在庫しておくことは、工事会社にとってはリスクです。スターリンク工事を継続的に行っていない会社では、必要な材料を現場に持ち合わせていないこともあるでしょう。そのため「既存配管は使えません」と判断されてしまうケースの中には、技術的な問題だけでなく、材料や準備の問題が含まれている可能性もあります。
室内側から壁の中を確認して貫通穴を施工
アンテナ設置予定面の室内側にコンセントプレートがある場合は、そのプレートを外して、あらかじめ開口されている壁の中を確認しながら貫通穴をあけることがあります。しかし今回は、アンテナを設置したい面にコンセントプレートがありませんでした。
一方で、ベランダ側にはコンセントプレートがありました。ただし、外壁のように立ち上がった壁で囲まれたベランダだったため、そこまでスターリンクケーブルを回してしまうと、配線経路としても外観としてもあまりおすすめできない状況でした。
そこで今回は、部屋の角に近い位置で室内側の壁を開口し、壁の中の断熱材の状態を確認したうえで、アンテナ設置面である西側の外壁へ貫通穴をあける方法を選びました。外から見ると建物の中央寄りに穴があいているように見えるかもしれませんが、実際には室内の角、ベランダのすぐ内側にケーブルを通しています。
当初は柱に近い位置で開口し、断熱材を柱から一度離して、その隙間に貫通穴をあける予定でした。しかし今回は断熱材の張り方の都合でその方法が難しく、断熱材を直接切り開いて作業する必要がありました。
断熱材の表面のビニールに切り込みを入れ、中の断熱材をずらして、ドリルに絡まないようにしてから慎重に外壁へ貫通穴をあけています。穴をあけたあとは貫通パイプを通し、切り開いた断熱材のビニール部分は専用の気密テープでふさぎました。
貫通パイプは外壁と断熱材の両方を意識して固定
今回の貫通パイプには、外側にねじ山のある全ねじタイプのパイプを使用しました。このタイプは専用のナットで外壁を挟み込むように固定できるため、ただパイプを差し込むだけの施工よりも安定した仕上がりになります。
今回はナットを3個使用しています。まず外壁を挟み込むように2つのナットで固定し、その後、室内側の断熱材の表面を整えたうえで、手前側にもナットを入れて断熱材とパイプの位置を安定させました。
細かい部分ではありますが、このような施工をしておくことで、ケーブルが壁の中で不用意に動きにくくなり、仕上がりも安定します。外から見える部分だけでなく、壁の中や室内側の処理まで含めて工事品質だと考えています。
白の配管と防水ボックスで外壁になじむ仕上がりに
貫通穴の屋外側には防水ボックスを設け、そこからスターリンクアンテナまで配管を直接つなげています。接続部分にはもちろん防水タイプの部材を使用し、雨水が入りにくいように施工しています。
いただいていた画像では外壁は白とネイビーの2色に見えたので、白と黒の配管を用意していました。実際には薄いグレーとネイビーの壁だったのですが、雨どいなどは白だったためきれいに収まりました。
屋外配管には、当社標準としてPFD管を使用しています。古い習慣のまま屋外でPF管を使っている工事も見かけますが、PF管(PFS管)は直射日光に対する耐久性が高いとは言えず、数年で劣化して割れたり、風で穴が開いたりすることがあります。
屋外で長期間使う配管は、雨だけでなく紫外線にもさらされます。見た目が似ていても、屋内向けの材料と屋外向けの材料では耐久性が違います。スターリンクのように屋外機器へケーブルを通す工事では、こうした部材選びも重要です。
スターリンクの固定金具は壁越しに柱へしっかり固定
スターリンクアンテナの固定金具は、壁越しに柱へしっかり固定しています。外壁材だけに効かせるような固定では、長期的な強度に不安が残るためです。
スターリンクは一般的なテレビアンテナとは形状も重さも異なり、風の影響も受けます。特に壁面から立ち上げる場合は、金具の強度、固定位置、ビスの効き方、配線の取り回しまで含めて考える必要があります。
一度設置したあとに何度も補修が必要になるようでは、お客様にとっても負担になります。当社では、できるだけメンテナンスフリーに近い状態で長く安心して使えるよう、設置前の確認と固定方法を大切にしています。
貫通穴のすき間は非硬化パテで処理
貫通穴にスターリンクケーブルを通したあとは、すき間を非硬化パテで埋めています。しっかり施工すれば、防虫・防気の面でも問題なく仕上げることができます。
コーキングで完全に埋めてしまう方法もあります。その方が防虫や防気の確実性が高い場面もありますが、将来的にスターリンクケーブルを交換したり、LANケーブルを追加で通したりする場合に、作業が難しくなってしまいます。当社では、むやみに穴を増やさず、将来の工事にも対応しやすい状態を残すことを重視しています。
少し脱線しますが、古いエアコン工事などで使われていた硬化型パテは、数年から10年ほどで剥がれ落ちてしまうことがあります。古いエアコン穴がむき出しになり、雨水が入ったり、鳥の巣ができていた事例も見たことがあります。
前職時代の話ですが、古いエアコンから異音がすると言われて見に行ったところ、室内機の裏側でコウモリが暴れていたこともありました。私は室内で虫や小動物を見るのがあまり得意ではないので、こうした貫通穴の処理はつい気になってしまいます。
スターリンク工事は通信機器の設置工事ですが、建物に穴をあける以上、住宅設備工事としての配慮も必要です。防水だけでなく、防虫・気密・将来のメンテナンス性まで考えて施工しています。
室内側は東芝のプレートで仕上げ
室内側の仕上げには、東芝の簡易防火プレートを使用しました。もともと隣に東芝製のコンセントプレートが使われていたため、それに合わせる意図もありました。今回は社内在庫の都合もあり、簡易防火タイプのプレートで仕上げています。
準防火地域や建物の仕様によっては、コンセントプレートや配線器具まわりに金属製プレート、または簡易防火プレートなどが求められる場合があります。プレートを交換・追加するだけのように見えても、建物の仕様や地域条件によって注意点が変わるため、こうした部分も確認しながら施工することが大切です。
アンテナ端子の追加工事も対応
引き込み配管の確認と、壁の中の様子を確認するために2階のコンセントプレートを開けたところ、テレホンガイドの裏には空配管ではなくアンテナケーブルが来ていました。電波を確認したところ、問題なく地デジの電波が来ていたため、お客様に確認したうえで、アンテナ端子へ取り換える工事も追加で行いました。
ここに使われていたケーブルは、アンテナ工事のブログなどでよく聞くS5CFBではなく、RG6ケーブルでした。当社では通常、さらに上位グレードのS5CFBTを使用していますが、RG6はCATV工事などでよく使われるケーブルで、日本の規格で言うとS4CFBとS5CFBの中間、いわゆる4.5C程度の太さに近いケーブルです。
先端加工には、このRG6に対応した部材が必要です。当社ではアンテナ工事のプロとしてRG6用の端末部品も用意しているため、問題なく加工し、アンテナ端子として仕上げることができました。壁の中の配線としてRG6が使われていたのは珍しく、少し驚いたポイントでもあります。
なお、S5CFBなど白いアンテナ線の屋外使用については、別の記事でも解説しています。気になる方は、白いアンテナ線は屋外で使っていいのかも参考にしてください。
設置後のスピードテスト
スターリンクの取り付けが完了したあと、複数回スピードテストを行いました。測定結果の中には、ダウンロード速度452Mbpsという非常に速い数値も出ています。
ただし、スターリンクの速度は常に一定ではありません。衛星の位置、時間帯、周囲の利用状況、天候、設置環境、Wi-Fi環境などによって変動します。今回の数値は非常に良好な結果ではありますが、常にこの速度が保証されるものではなく、あくまで今回の現地での測定結果としてご覧ください。
スターリンク公式サイトでも「400Mbps超」という表記がされていますが、これは99パーセンタイルの数値として案内されています。パーセンタイルという言葉は少し耳慣れないかもしれませんが、簡単に言えば、測定結果を低い順に並べたときに、どの位置にあるかを示す考え方です。
たとえば99パーセンタイルで400Mbps超という場合、多くの利用者が常に400Mbpsを超えているという意味ではありません。かなり良い条件で出る上位側の数値として見るのが自然です。そのため、今回のように400Mbpsを超える速度が出ることはありますが、スターリンクの速度は設置環境や時間帯によって変動するものとして考える必要があります。
当社では、単にアンテナを取り付けるだけでなく、できるだけ遮蔽物の影響を受けにくい場所を選び、設置後の動作確認まで行っています。スターリンクは設置場所によって体感品質が大きく変わるため、工事前の確認と設置後のチェックがとても重要です。
施工事例の更新が追いついていない理由
当社では4月、5月も多数のスターリンク工事を行っており、現在では通算500件を超える施工実績となっています。戸建て住宅だけでなく、法人施設、自治体関連施設、船舶、山間部、別荘、店舗、事業所など、さまざまな環境でスターリンクを設置してきました。
本来であれば、こうした施工事例をもっと多くご紹介したいところです。ありがたいことに、お客様から掲載許可をいただけることも多いのですが、日々の工事やカウンセリングが重なり、なかなか記事として紹介しきれていないのが現状です。
ただ、施工事例として公開できていない工事でも、一件ごとに現地の状況を確認し、お客様の使い方や建物に合わせて工事内容を検討しています。スターリンクの設置場所、配線ルート、室内側の仕上げ、将来のメンテナンス性など、不安なことがあればお気軽にお問い合わせください。




