デザインアンテナと八木式アンテナの性能比較(動作利得編)

アンテナ特性(動作利得前半周波数)

お客様からよく聞かれる質問の一つに「デザインアンテナは八木式アンテナより性能が低いのでしょうか」というものがあります。
電話などで聞かれた場合は丁寧に説明しておりますが、改めてこちらでも図解付きで解説したいと思います。

いきなり結論

まず結論から言うと、同じ条件で比べた場合はあまり変わらないと考えてもいいと思いますが、一般的にデザインアンテナは2階の壁面(地上高5m程度)に対し、八木式アンテナは2階の屋根上(地上高10m以上)に設置されることが多く、この二つで比べると八木式アンテナの方が性能(受信感度)がいいのは当然と言えます。
とはいえ公表されているスペックには明らかな差があります。
どういったアンテナを付けようか悩んでいる人は一度読んでおくとしっかり判断できるようになるかもしれません。
ちなみに、電波が心配なので八木式にしてください、とだけリクエストするのは本質ではありません。
一般デザインアンテナとUA20という八木式アンテナには性能差が確かにありますが、UA20と見た目がほぼ変わらないUL20にはそれ以上に性能差がありますし、もっとコンパクトなUL14の方がUA20よりも高性能だということを知っておくといいでしょう(スカイツリーのエリアの場合)。

詳細解説

動作利得

それでは各種アンテナメーカーから公表されているアンテナの性能表のうち、動作利得についてをまとめたものを見てみましょう。

アンテナ特性(動作利得全周波数)
公開されているグラフから目視でコピーしたものなので誤差があります。

各アンテナとも受信する周波数によって動作利得の高いところと低いところがあります。
このグラフは高いほど受信性能がいいと言えますが、受信チャンネルによってその性能順位は入れ替わっています。
またいくつかのアンテナは34ch(596~602MHz)でグラフが終わっていますが、これらのアンテナはローバンド(ローチャンネル)タイプのアンテナであるため、これ以降のチャンネル受信を想定しておらず、動作利得のグラフが公開されていません(昔のアンテナは公開されていたのですが)。
そのぶんローバンドタイプはおおむね性能が高めとなっています。
実際の受信結果には、周辺のノイズや反射波(これもノイズの一つですが)などの影響と、アンテナのほかの特性との相性のバランスで決まるので、この順位がそのままというわけではありません。
なおこの動作利得はdB(デシベル)で表しますが、この数値の比がそのまま実際の受信レベルに合わられるわけではありません。ある周波数ではUAH201に対してULX30の動作利得の見た目の数値が1.5倍あった場合でも、受信レベルの見た目上の数値が1.5倍になるわけではありません(UAH201で60dBμV受信できたチャンネルがULX30で90dBμVで受信できるわけではない)。

今回比較したアンテナ

既にグラフが混雑していますので、まずはこのラインナップで我慢してください。

  1. UA14 オールバンドタイプのやや小ぶりのアンテナ。電波の弱いところでなければ概ね問題ない。
    UA14
  2. UA20 多くの工事会社が標準として用いているアンテナ。オールマイティに使え確かに標準。
    UA20
  3. UL14 コンパクトでも実は非常に性能のいいおすすめアンテナ。ただし若干コストアップ。
    UL14
  4. UL20 UL14のさらに上の性能。スカイツリーのエリアならこれもおすすめ。
    UL20
  5. ULX14 長さはコンパクトでもX型のパラスタックアンテナによりUL14より指向性を強めたモデル。
    ULX14
  6. ULX20 ULX14の兄貴分。ここまでくると大分重量が増えるので注意。
    ULX20
  7. ULX30 ULX20よりもさらにロングでヘビー。最終選択肢的なアンテナで、これを付けるよりほかの方法をまず試すべき。
    ULX30
  8. UAH201 デザインアンテナの中でシェアの高いDXアンテナのスタンダードタイプ。性能もそれなりで仕入れコストが安く業者さん思いのアンテナ。
    UAH201
  9. UAH261 UAH201よりも少し性能を上げたいときの選択肢。とは言え費用対効果は疑問。
    UAH261
  10. U2SWLA20 マスプロ電工のデザインアンテナフラッグシップモデル。UAH201よりさまざまな点で優位に立つも仕入れコストの高さから業者さんにあまり選ばれない。
    U2SWLA20
  11. U2SWLA26 U2SWLA20の高性能タイプ。とあるハウスメーカーが標準的に取り入れるも工事価格はそれ以上に高額のアンテナ。
    U2SWLA26

各アンテナのスペック比較

アンテナのスペックをまとめると以下の通り

八木式アンテナスペック比較

UA14 UA20 UL14 UL20 ULX14 ULX20 ULX30
受信ch 13~52 13~52 13~34 13~34 13~34 13~34 13~34
素子数 14 20 14 20 14
パラスタック
20
パラスタック
30
パラスタック
対応偏波 水平/垂直 水平/垂直 水平/垂直 水平/垂直 水平/垂直 水平/垂直 水平/垂直
動作利得 8.0~12.5 8.5~13.8 9.1~12.5 10.1~13.5 10.6~13.5 11.3~14.5 13.2~16.1
VSWR 2.5以下 2.5以下 2.5以下 2.5以下 2.2以下 2.2以下 2.0以下
半値幅 34~57 28~52 33~55 28~47 26~43 18~35 18~29
前後比 17~28 19~28 16~30 18~30 18~27 18~28 18~26
対風速 50 50 50 50 45 45 45
寸法 518
x
340
x
1014
518
x
340
x
1374
518
x
340
x
1014
518
x
340
x
1480
518
x
389
x
1151
518
x
427
x
1838
518
x
405
x
2791
質量 0.85 0.98 0.9 1.1 1.54 2.06 3.2

デザインアンテナスペック比較

今回グラフでは表していませんが、垂直偏波専用アンテナ2機種、小型デザインアンテナも加えています。

UAH201 UAH261 U2SWLA20 U2SWLA26 UAH201V U2SWLA20V SDA-5-1
受信ch 13~52 13~52 13~52 13~52 13~52 13~52 13~52
素子数 20相当 26相当 20相当 26相当 20相当 20相当 5相当
対応偏波 水平専用 水平専用 水平専用 水平専用 垂直専用 垂直専用 水平/垂直
動作利得 7.8~9.8 8.4~10.2 7.8~9.8 8.4~10.2 7.5~9.6 7.8~9.8 4~5
VSWR 2.5以下 2.5以下 2.5以下 2.5以下 2.5以下 2.5以下 2.5以下
半値幅 75~86 71~82 76~104
前後比 9~18 12~22 10~17 12~18 9~18 12~20 12~18
対風速 50 50 50
寸法 590
x
220
x
113
626
x
252
x
123
577
x
210
x
118
620
x
240
x
118
626
x
252
x
123
620
x
240
x
118
75
x
275
x
125
質量 1.7
(2.1)
2.0
(2.4)
1.5
(1.9)
1.8
(2.2)
2.0
(2.4)
1.8
(2.2)
0.44
(0.58)

DXアンテナ、マスプロ電工、サン電子それぞれ公開している情報に差があるのでいくつかは空欄になっています。
質量はアンテナのみをメインに、取り付け金具を含めたものを括弧で表しています。

スペックから読み取れること

サイズ・重量

八木式アンテナではまず大きさの差が目立ちます。
今回比較したものの中で一番小さいUA14・UL14の長さが約1mなのに対し、ULX30は実に2.8mの長さとなります。最近のアンテナは屋根の上でも1.8mのマストで設置することが多いのですが、そのマストよりも長くなってしまっています。
同様に質量はUA14の0.85kgに対してULX30は3.2kgと約4倍の重量となります。
これだけ大振りでも対風速が45m/sというのがさすがです。

半値幅

半値幅とはまっすぐ受信方向を向けた状態から左右合わせて何度動かすと電波の受信電力が3dB落ちるかを表したものです。この角度が狭いほどまっすぐ受信方向に向けなくてはいけない反面、他の方向から入ってくる反射波などのノイズの影響を受けにくいとも言えます。
一般的に素子数が多くなるほど角度が狭まる(指向性が強くなる)と言われますが、表で見てもその通りですね。
デザインアンテナは八木式アンテナに比べ半値幅が非常に大きいのがわかります。
ある程度角度を合わせれば受信できてしまうとも言えます。

前後比

八木式アンテナとデザインアンテナの差としてもう一つの特徴が前後比に表れています。
これはアンテナの前から受ける電波と後ろからくる電波の差を表します。
素子数が大きいほど差は大きくなりますが、デザインアンテナの場合は性能上の素子(相当)数が大きくなっても八木式アンテナよりも比較的低い数値になっています。
これは半値幅とも関連することなので当然ですが、デザインアンテナの方が周囲から電波の影響を受けやすいとも言えます。
一般的なデザインアンテナの設置方法としては壁を背にした設置方法(壁面設置)になるので、その場合は工法に障害物があるため実質的な前後比が上がるとも言えます。
電波干渉の多い場所では、デザインアンテナをマストに設置するのはあまり適切ではないかもしれません。
クラウンクラウンではマスト上のフラットタイプデザインアンテナの設置は、風災予防のため非推奨です。
アンテナ自体の耐風速は風速50m/sですが、あくまでアンテナが破壊されない風速であって、もっと弱い風でも取り付けたアンテナが金具ごと曲がったり、飛んでいくリスクが十分あるでしょう。

動作利得

アンテナの性能比較で言えばこの項目が一番重要とも言えます。
普及型の20素子八木式アンテナUA20は動作利得が8.5~13.8dBに対し、20素子相当のデザインアンテナUAH201の動作利得が7.8~9.8dB、U2SWLA20も同様です。
やはりデザインアンテナよりも八木式アンテナの方が動作利得が高いようです。
受信チャンネルによって差がありますが、ローチャンネルタイプのアンテナ以外はおおむね同じようなグラフになっています。
ではやはりデザインアンテナは使うべきではないのか?となってしまいますね。

グラフの確認

改めてグラフを確認してみましょう。

グラフの見方

グラフは横軸が周波数(物理チャンネル)、縦軸がアンテナの動作利得です。
アンテナごとにグラフと機種名を変えています。
いくつかの物理チャンネル時点での動作利得順位をグラフに書き込んでいます。

  1. 16ch スカイツリーからはTOKYO MXの放送に使われています。
  2. 32ch 埼玉県平野原送信所(浦和放送塔)からテレ玉の放送に使われています。
  3. 45ch~52ch(範囲内順位変動なし) みなとみらい中継局から横浜市を中心に基本放送+TVKの放送に使われています。

なお冒頭でも書きましたが、ローチャンネルタイプとは主にスカイツリーの電波や近隣のローカル放送を受信対象として作られているため、35ch以降の動作利得は公表されていません。
※35ch以降もスペックに入れると動作利得〇~△の〇が小さい数値になってしまい誤解を招くからでしょう。

16ch【TOKYO MX(スカイツリー)】の受信について

断トツでULX30が大きい動作利得となっていますが、断トツで使いづらいアンテナです。
耐風速が45m/sというのがとても信じられないくらい強風の時はしなり、揺れます。
屋根や固定ワイヤー(支線)に対する負担も大きいため、ワイヤーで屋根の上に固定する工事には全く向いていません。
安全上の観点から倒れる心配のないしっかりと構造部分に固定されたマストなどへの設置を検討するべきです。

続いてULX20も非常に高い数値となっています。
続いてULX14とUL20が僅差、その後UL14,UA20,U2SWLA26、UAH261、UA14、U2SWLA20、UAH201と続きます。

18ch【TVK(横浜送信所)】の受信について

16chと近いこともあり内容には特に違いはありません。

21ch~25ch【広域民放(スカイツリー)】の受信について

全体的にはあまり変化はありませんが、U2SWLA26、UAH261、UA14がほぼ重なるようになっていきます。
またULX20とULX14の差が縮まってきます。

26ch~27ch【NHK(スカイツリー)】の受信について

ULX30の圧倒的性能はそのままですが、ULX20、ULX14、UL20の差がだいぶ詰まってきます。
U2SWLA26とUAH261はほぼ同じで若干UA14がこの二つを上回るような感じもあります。

30ch【チバテレ(船橋送信所)】の受信について

ULX30がピーク時(22ch~23ch)のULX20程度まで落ちてきました。
また次に来るのがUL20でちょうどULX14を抜き去るところです。
ULX20は28chあたりでこの二つのアンテナを下回り始めます。
次にUL14、UA20と続いています。
その後UAH261、UAH261、UA14がほぼ重なっています。
最後は変わらずにU2SWLA20、UAH201という順番になっています。

32ch【テレ玉(平野原送信所)】の受信について

動作利得順に、ULX30、ULX14、UL20、ULX20、UL14、UA20、UAH261、UA14、U2SWLA26、U2SWLA20、UAH201となっています。
トップと最下位は変わりませんが、途中でいくつか入れ替わっています。
興味深いのは同じシリーズのULX14の方がULX20よりも高い数値を出していることです。

45ch~52ch【みなとみらい中継局】の受信について

ローバンドタイプはここではすでに消えているので、オールバンドタイプの中から選びます
※ハイバンドタイプのアンテナもありますが今は一般的ではありません。
動作利得順にUA20、UA14、U2SWLA26、UAH261、U2SWLA20、UAH201となっています。
デザインアンテナはどれもあまり変わりがありませんが、UA20とUA14はスカイツリーの電波帯域のUL20、UL14をそれぞれ上回っています。
標準的に使われるオールバンドタイプのアンテナですが、これらのアンテナはこういった高めの周波数の受信用として使うのがいいでしょう。

スカイツリーの電波と近隣ローカル局電波の受信について

何度も書きますが、ULX30の設置は現実的ではありませんし、周囲にも大きなインパクトを与えます。
大型台風が接近してきているというニュースを聞いたときに、お隣の家の大きなアンテナがものすごく揺れていたらそれは恐怖を感じてしまうかもしれません。
アンテナ特性(動作利得前半周波数)

おすすめアンテナ

デザインアンテナの場合 U2SWLA20

屋根上に設置する場合 UL14

電波が弱い場合はそれ以上のアンテナも候補ですが一般的には上記の二択でしょう。
電波の強いエリアでもビルなどが多く反射波によるノイズが多い場所の場合などはULXなど指向性の強い(半値幅の小さい)アンテナを利用する必要があるかもしれません。
電波測定をしたときにMERやBERという数値が良くない場合に試してみるといいでしょう。
ビルが多いわけではないのにMER、BERが良くない場合は木々などの影響を受けていたり、まれに高圧線などの影響を受けている場合もあります。
木々の影響であれば取付場所の移動や高さを上げる、高圧線の影響の場合は高さを下げるなどで改善できることもあります。

ローカル局の受信用にもう一つアンテナを加える場合、同じ性能のものを二つ用意するよりも、受信感度に合わせてアンテナを別のものにするのも一つの方法です。
極端に違いがある場合は混合器(関東広域用)で電波をミックスするときに強い方をわざと弱める(アッテネーターをオンにする)ことができます。

スカイツリー以外のエリアにおける電波の受信について

アンテナ特性(動作利得全周波数)
公開されているグラフから目視でコピーしたものなので誤差があります。

スカイツリーの電波以外でも同様の周波数を使用している中継局もあります。
そのような場所ではスカイツリーと同様に考えるといいでしょう。
ULシリーズなどがサポートしていない周波数帯域を受信する場合はUAシリーズなどを電波の強さに応じて使い分ける必要があるでしょう。

高性能アンテナを付ければブースターが不要になるか

ブースターを不要とするためにアンテナを高性能なもの、特に大きなものにするという方法はあまりお勧めしません。
ブースターはアンテナで受信した電波がテレビに届くまでの間に様々な要因で弱まって受信不良を起こしてしまうのを防ぐために電波を強くするためのものです。
弊社で使用しているブースターは最大45dBμV程度電波を強くすることができますが、多くの場合30dBμV程度しか電波を増幅させません。
それでもアンテナの置き換えだけでこれだけの数値の変化を起こすことは無理があります。
壁面設置をやめて屋根上に屋根馬設置するなどの「設置場所の移動」も行えばできることもありますが、見た目、耐久性、工事費用、メンテナンス性など多くの変化がありますので、それらも考慮する必要があります。
必ずブースターは必要となるわけではありませんが、アンテナはできるだけコンパクトなもので設置して耐久性を高めるのが工事のセオリーだと思います。
電源の利用に特殊な事情がある場合などは別途考えなくてはいけないと思います。

垂直偏波のエリアについて

埼玉県内では児玉中継局、千葉県では館山中継局や君津中継局、神奈川県では平塚中継局、茨城では笠間中継局などが垂直偏波方式の電波を出しています。
八木式アンテナの素子(短い棒)が一般的には水平になっているのに対して、このエリアでは垂直になるようにアンテナを90度傾けて設置します。
そのため、デザインアンテナは水平偏波専用モデルは使うことができません。屋内など雨のかからないところであれば工夫次第で可能ですが、屋外では原則やってはいけない取り付け方になりますので注意してください。
デザインアンテナを設置したい場合は垂直偏波専用モデルや、水平・垂直兼用モデルがありますのでそれらを使用しましょう。

デザインアンテナと八木式アンテナの性能比較(動作利得編)
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