広島県尾道市で行ったスターリンク設置工事。既存配管を活用した効率的で美しい施工事例をご紹介します。
家を新築する際に、スターリンクの設置をあらかじめ想定するケースはまだ少ないのが現状です。そのため、多くの場合、スターリンクの配線用に後から壁や屋根に穴を開ける必要が生じます。当社および当社の講習を受けた工事業者では、気密性、防水性、防虫性に配慮した丁寧な穴あけ施工を行っています。しかし、もし既存の設備を活用して穴あけを避けられるなら、それに越したことはありません。
スターリンクのアンテナとルーターをどこに設置するのがベストか、既存配管が使用可能かどうかなど、さまざまな条件を検討しながら最適な施工方法を決定していきます。今回は、屋根裏を通す案と既存配管を活用する案を比較検討した結果、既存配管を利用して施工を行いました。
工事の内容
広島県尾道市で行った施工内容をご紹介します。今回は、以前使用されていた光ケーブルの配管を活用して、スターリンクの専用ケーブルを配線しました。
事前にお客様と入念な打ち合わせを行いましたが、配管のサイズや状態はお客様では確認が難しいため、複数の工事方法を想定しました。屋根裏を経由する案やスターリンク純正の45mケーブルを用いる案など、あらゆる状況に対応できる準備を整えて工事に臨みました。
最終的には既存の配管を再利用できたことで、追加の穴あけ作業を必要とせず、お客様の希望する位置まで美しく配線することができました。
スターリンクの設置工事には専用ケーブルの使用が必須であり、テレビアンテナの工事や一般的なLAN配線とは異なる注意点があります。特に、配線の取り回しや配管の再利用には専門的な知識と技術が求められます。
今回の施工事例が、スターリンク導入を検討されている方にとって、配線処理の参考になれば幸いです。
写真で見るスターリンク工事の流れ
スターリンクアンテナ設置場所と配線経路のカウンセリング
※上記画像は参考画像で今回の案件とは関係ありません。
当社では、最善の工事を行うためにさまざまな材料を取りそろえておりますが、確実で美しい仕上がりを実現するためには、事前に図面や建物の写真をご提供いただき、綿密なカウンセリングを行っています。
カウンセリングは、電話、メール、LINEなど、お客様にとって最も便利な方法で対応しています。
事前に外観や建物構造を確認することで、スターリンクアンテナやルーターの最適な取り付け場所や配線の取り回し、引き込み場所を慎重に検討します。また、周囲の環境を把握することで、スターリンクの通信環境が適切であるかも確認します。
今回は平屋の戸建て住宅で、家の中央付近にあるLAN配線の集中地点にスターリンクルーターを設置したいとのご希望をいただきました。そのため、屋根裏を経由した配線方法や、光配線用のCD管(またはPF管)を利用できるかどうかを検討しました。
最初にお問い合わせフォームからご連絡をいただき、その後、LINEを通じて建物の写真や詳細なご要望をお伺いしながら、スムーズに計画を進めました。
現地で最終確認
お客様のご希望は、LAN配線が集中しているパントリー内の棚へスターリンクルーターを設置することでした。切妻屋根の平屋であったため、設置場所から屋根裏を経由し、屋根裏から室内のコンセントプレートまで配線を引き込む方法を想定していました。ただし、既存の配管が利用できる場合は、穴あけや屋根裏作業をせずに工事を行える可能性があるため、その選択肢も考慮しました。
配管を使用する場合、ケーブルの長さが最短距離では済まないことがあるため、あらゆる状況に対応できるよう45mのスターリンク純正ケーブルを用意し、工事に臨みました。
今回は、使用されていない光ケーブルがそのまま残されていたため、その光ケーブルの経路が配管内にあるのか、配管の太さが十分か、他のケーブル(アンテナ線など)が通っていないかを確認しました。
具体的な作業としては、室内のコンセントプレートを分解して光ケーブルの行方を調査し、屋外では防雨プレートを外して内部の状態を確認しました。その結果、配管が利用可能であることが分かりましたが、配管内の全長が不明だったため、実際にケーブルを通してテストを行うことになりました。
長さの確認を兼ねてスターリンクケーブルを配管に通す
配管が使えることが確認できたら、その近くにスターリンクアンテナを設置できるかを最終確認します。
事前にお客様からいただいた建物と周辺の写真や、ストリートビューをもとに問題ないことは把握していましたが、今回は念のため障害物チェックアプリを使用しました。ただし、このアプリの結果はシミュレーションであり、実際の状況次第で誤差が出る可能性があるため、過信は禁物です。
コンセントプレートの中を確認したところ、光ケーブルが予想外の場所から出ていました。通常、写真のような2連コンセントの場合、右側のLAN端子側に配管がつながっており、上部や下部から光ケーブルが出ることが一般的です。しかし今回は電源側に回っていたため、配線経路を確認するために電源ユニット(左側の列)も取り外しました。いずれにしても、最終的に防気カバーを取り付ける際、この部分を取り外す必要があるため、事前に確認しておくことが重要でした。
光ケーブルの通り道を確実に確認した後、試験的にスターリンクケーブルを光ケーブルにテープで固定し、慎重に引き込み作業を行いました。当社および協力業者では、原則として2名以上で作業を行うため、通線工事も確実でスムーズに進めることができます。一人作業でも不可能ではありませんが、特にスターリンクケーブルを引き込む作業は難易度が高く、ケーブルが傷つきやすいため、複数名での作業が推奨されます。
最終的に、スターリンクケーブルの長さも問題なく確保できました。引き込み(引き出し)に使用した光ケーブルは、邪魔にならないよう丁寧にまとめておきました。
突き出し金具とマストの設置
今回は伸縮タイプの金具を2つ使用しました。この金具はすっきりとしたデザインながら、2つを組み合わせることで確実な固定が可能です。
使用した金具は無段階伸縮タイプではなく、3段階伸縮のタイプです。微調整ができない点はありますが、伸縮長さを揃えやすいというメリットがあります。そのため、設置作業が効率的に行えました。
固定にはステンレス製のビスを使用し、事前に下穴を開けてから、変成シリコーンを塗布したビスを打ち込みました。この方法により、防水性が高い仕上がりを実現しています。
なお、防水対策として重要なのは、ビス頭に後からシリコーンを乗せるだけでは不十分である点です。ビスを打ち込む前にしっかりとシリコーンを塗り込むことで、確実な防水が可能になります。
また、マストには水準器を取り付けて、水平垂直を正確に調整しました。この工程を丁寧に行うことで、将来的に壁への悪影響を抑えられるだけでなく、マストを鉛直に立てることで倒壊リスクを低減できます。
スターリンクケーブルの防護と配管の仕上げ
スターリンクケーブルは耐候性があるとされていますが、具体的なテスト結果やデータは公表されていません。そのため、建物に固定して長期間使用する場合は、耐候性のあるチューブやカバーで覆うことを推奨します。
キットの世代によってケーブル仕様が変わることがありますが、日本よりも早くサービスが開始された海外では、ケーブルが劣化して使えなくなったという事例が報告されています。これらの事例を参考に、適切な防護対策を講じることが重要です。
二枚目の写真は一般的によく見られる配線方法ですが、高い位置に設置したアンテナから配線が配管に対して下から入る構造には重要な意味があります。
配管カバーを取り付けると、物理的に下からしか配線できないように見えますが、実はこのU字型の配管・配線構造には、雨水や結露した水が配管の侵入口に直接垂れ込むリスクを低減する役割があります。
このような工夫は、一般の方には見過ごされがちですが、プロの工事業者としては常識ともいえる配慮です。長期間にわたって安全で信頼性の高い施工を実現するための重要なポイントです。
3番目の写真は、既存配管にスターリンクケーブルを通した様子を示しています。この写真では配管に十分な隙間があるように見えますが、ケーブルの先端部はやや大きく、防水パッキンが付いているため、通す際に慎重さが求められます。
最終的には、ケーブルを通した後の配管の隙間をパテで丁寧に埋め、気密性と防水性を確保しました。
室内の仕上げとアンテナの方向調整
第3世代スターリンクキットの場合、アンテナが自動で方向を調整する機能はありません。そのため、専用アプリを使用して現在のアンテナの向きを確認しながら、手動で方向調整を行います。
方向調整が完了したら、室内の仕上げ作業を行います。
建物の構造によっては、壁内部を空気が通りやすい場合があります。このような場合、防気カバーと呼ばれる透明の薄い器状の部品をコンセントの裏側に設置することで、壁内を流れる空気がケーブル取り出し口から漏れるのを防ぎます。
最終的にコンセントカバーを元の状態に戻して仕上げ作業を終えました。
スピードテストの結果、スターリンク自体の通信速度は下り306Mbps、上り15.1Mbpsという数値が得られました。第2世代キットに比べ、Wi-Fiの通信速度も大幅に改善されています。ただし、この速度はルーターとスマートフォン間の測定結果であり、テストを実施した場所や環境によって変動します。
「高度なスピードテスト」画面で左側に表示されるWi-Fi速度が、右側のスターリンク速度よりも低い場合は、以下の対策を検討してください:
- ルーターの位置や方向を調整する
- 有線接続に切り替える
- 追加のWi-Fiルーターを設置する
施工のポイントと注意点
既存配管利用の利点
既存配管の利用は、スターリンク工事に限らず多くの工事で有効な選択肢です。ポイントとしては、配管の太さが十分であるか、ケーブルの長さが足りるか、配管がどこからどこにつながっているのか、さらに後から他の用途に使う予定がないかを慎重に確認する必要があります。
当社では地中配管を利用してスターリンクケーブルを配線した事例もありますが、45mのケーブルでギリギリの長さだったケースもあります。
多くの場合、既存配管の屋外部分は、他の配線の出口と集中しています。また、道路側正面ではなく、側面の道路に近い位置に出ていることが一般的です。これは、電柱から光ケーブルやCATV(ケーブルテレビ)のアンテナケーブルを引き込みやすいように設計されているためです。
屋内の出口も多様で、リビングのテレビ端子、浴室天井点検口、マルチメディアボックス(情報分電盤)、屋根裏などさまざまな場所に設置されていることがあります。
新築後すぐの場合、空の配管があったとしても、将来的に他の用途で使う予定があるかもしれません。たとえば、スターリンクを非常用やサブ回線として利用し、別途光回線を引き込む場合、同じ配管を使って良いかを検討する必要があります。
たとえ配管内にスペースがあっても、既存のケーブルがある場合、摩擦によって詰まるリスクや、既存ケーブルを傷つける可能性があります。特に、配管が曲がっている部分ではトラブルが起こりやすいです。
これらを十分に考慮し、慎重に計画を立てることが大切です。
スターリンク設置の専門家が必要な理由
スターリンクの設置工事におけるケーブル配線作業は、軽微な電気工事または電気工事に該当します。スターリンクは、第1世代で最大56V、第2世代で48V、第3世代で57Vの電圧が流れます。ケーブルに過剰な力を加えたり、不適切な配線処理を行うと、火災事故につながる可能性があります。
さらに、電気工事業の登録がない違法工事の場合、火災などの事故が発生した際に工事業者の保険が適用されず、補償が受けられないリスクもあります。
当社は2025年末までに300件以上のスターリンク工事を行ってきました。これらの施工経験は、過去の設備工事や高度なアンテナ工事、情報通信工事の知識と技術を活かしています。
スターリンク設置において重要なのは、単に丈夫に設置するだけではありません。インターネット環境の適切な構築、Wi-Fiの最適化、スターリンク特有の性能を最大限に引き出す工事が求められます。また、防水、防虫、気密性を考慮した穴あけや、適切な材料の確保も不可欠です。
当社では、施工開始当初から高品質な工事を重視し、材料費が赤字であっても投資を惜しみませんでした。現在は、無駄のない材料運用が可能となり、協力業者には状況に応じて必要な量を切り分けて供給しています。
スターリンク関連情報は国内情報が少なく海外コミュニティに依存しがちです。当社では本社に第2世代、大宮営業所に第3世代のスターリンクキットを設置し、実際の使用感を確認しています。その結果、IP電話の一部がスターリンク経由で利用できないなどのデメリットも把握し、知識を蓄積しています。
事前カウンセリングの重要さ
スターリンクは、条件が合えば通信できることはよく知られています。しかし、最適な設置を実現するには、多くの確認事項があります。
- 空が開けていること
- 電源が確保できること
これ以上の確認をアンケート形式で求めるのは、工事業者にもお客様にも負担となります。そのため、一つひとつ状況を把握しながら、お客様の意向や自覚していない希望をくみ取り、適切な提案を行うことが重要です。こうすることで、将来にわたって満足度の高い工事を提供することが可能になります。
今回の工事担当
今回の工事は、クラウンクラウンの自社工事ではなく、協力業者による施工です。後日、おうちのこうじ.comにて、施工事例を公開予定です。
クラウンクラウンでは、全国各地のスターリンク工事に協力業者を活用して対応しています。各協力業者は、情報通信工事に長けた電気工事業の登録を持つ信頼できる業者を厳選し、事前面談や講習を経て現地へ伺っています。
お客様との事前カウンセリングは主に当社が担当し、施工現場で想定外の事態が発生した場合にもフォロー体制を整えています。また、設置後のお困りごとやご相談についても当社が窓口となるため、安心してご利用いただけます。
工事の品質は当社の基準に準じるよう依頼していますが、一部、使用部材や工事料金が異なる場合があります。特に出張料金は、当社の自社スタッフが訪問する場合と比較して、大幅に低コストで実現できています。
- 松本 昭彦
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経歴と専門分野:
幼少期から家電設備の工事に親しみ、クラウンクラウンの設立の前に15年以上にわたりさまざまな設備工事の現場で経験を積みました。100名を超える下請け工事業者の取りまとめとクレーム処理責任者としての役割を経て、2011年に独立。品質重視と明朗会計をモットーに掲げ、業界改革を目指して高品質工事専門の「クラウンクラウン」を設立しました。
学歴:
東京電機大学理工学部情報科学科(中退)
事業構想大学院大学 事業構想士修士課程
主な資格:
国家資格:
1級電気工事施工管理技士
2級管工事施工管理技士
2級電気通信工事施工管理技士補
第一種電気工事士
工事担任者(2級デジタル)
給水装置工事主任技術者
一般建築物石綿含有建材調査者
石綿作業主任者
運行管理者
その他資格:
第2級CATV技術者
1級あと施工アンカー施工士
インテリアコーディネーター
キッチンスペシャリスト
一級リビングスタイリスト
二級福祉住環境コーディネーター
排水設備工事責任技術者
照明士
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