時々お客様からも訊かれることなので、当社の理解を深めるためにも改めて簡単にガルバニック腐食についてまとめたいと思います。
なお、当社はこの分野の専門家ではありません。できるだけ正確な情報をお届けできるように努めておりますが、説明に不正確な部分や不足している点があるかもしれません。あらかじめご了承ください。
溶融亜鉛メッキの器具とステンレスビスの組み合わせは、アンテナマストの固定など多くの工事で利用されます。しかし、異種金属接触腐食、つまりガルバニック腐食のリスクが心配されることもあります。この記事では、ガルバニック腐食とその防止策について詳しく解説します。
目次(矢印をクリックで開閉)
ガルバニック腐食(異種金属接触腐食)とは
発生条件
ガルバニック腐食は、異なる金属が電気的に接触している状態で、電解質(水や塩水など)が存在する環境下で発生します。この現象は、金属間での電子の移動によって引き起こされます。
腐食のメカニズム
ガルバニック腐食は、異なる金属間での電子とイオンの移動によって生じる現象です。このメカニズムは、異なる金属が接触しているときに、一方の金属から他方へ電子が移動することで始まります。この電子移動は、金属間の電位差によって生じる電流を形成し、これが腐食の主な原因となります。
この電子の移動に伴い、卑金属側(電子を失う側)では金属イオンが溶液中に放出され、この過程で金属表面が侵食されます。一方で、貴金属側(電子を受け取る側)では、溶液中のイオンが電子を受け取って固体の金属として析出するか、あるいは他の化学反応を引き起こします。
このように、ガルバニック腐食は電子の移動とイオンの化学反応の相互作用によって進行します。この現象は、特定の環境条件下で異なる金属が接触することで引き起こされる複雑な化学プロセスとして理解することが重要です。
異種金属を接触させるときの金属の選択
金属材料はそれぞれ異なる電気化学的性質を持っています。これにより、一方の金属が他方の金属よりも腐食しやすくなります。この特性を理解し、適切な材料組み合わせを選定することで、ガルバニック腐食のリスクを軽減することが可能です。
なお屋内で水などの電解質に触れない部分ではガルバニック腐食のリスクが少ないと言えます。
予防策
ガルバニック腐食を防ぐ方法はいくつかありますが、最も効果的な方法は異なる金属の直接接触を避けることです。これは、絶縁材を使用して金属を分離することで達成できます。

表面積の影響
ガルバニック腐食の進行は、金属の表面積に大きく影響されます。一般的には、アノード(腐食する側:卑なる金属)の表面積が大きいと、腐食の進行が遅くなります。これは、大きな表面積を持つ金属が多くのイオンを提供できるため、腐食が分散されるからです。今回の事例で言うと溶融亜鉛メッキ、つまり亜鉛がアノード(卑金属側)で、ステンレスがカソード(貴金属側)です。
当社の工事とガルバニック腐食
テレビアンテナ工事やスターリンク工事と錆の関係
当社では、アンテナマストの固定をはじめとする多くの工事で溶融亜鉛メッキの器具(サイドベースなど)とステンレスビスを使用しています。この組み合わせは、ビスがサビて壁を汚すのを防ぐだけでなく、ビス自体の強度も保持します。もし鉄のビスを使用すると、あっという間にビスは錆びて強度を失ってしまうでしょう。例えば、ステンレスのシンク(貴金属、表面積:大)の上に鉄製の缶詰め(卑金属、表面積:小)を置いて水を流すと、数時間で錆が出てしまいます。しかし、逆の組み合わせ、つまり鉄の器にステンレスのビスを置いて水で濡らしても、簡単には錆びません。
それでも、異種金属接触腐食のリスクが完全になくなるわけではありません。そこで、当社の工事では、このリスクを最小限に抑えるための知識と経験を持って取り組んでいます。
さらに、当社ではステンレスビスの施工時に変成シリコーンを塗布しています。これは防水目的で行っているものですが、変成シリコーンは非導電性の材料であるため、溶融亜鉛メッキの器具とステンレスビス間の絶縁を行い、ガルバニック腐食のリスクをさらに減らす効果があります。ただし、この効果を維持するためには、定期的なメンテナンスと点検が必要となります。
その他にステンレスとアルミの組み合わせの際は樹脂製ワッシャーを利用し、接触面をできる限り少なくする工法を用いています。
もしステンレス製の金具を使用する場合は、必ずステンレスのビスを用いるか、非導電性のワッシャーなどを使用しましょう。




まとめ
ガルバニック腐食は、異種金属接触腐食の一種であり、特定の条件下で発生します。当社の工事では、このリスクを軽減するための適切な材料選定と検証を行っています。安心して当社のサービスを利用いただくために、これらの対策を十分に行っています。
この記事がガルバニック腐食とその防止策に関する基本的な理解を深める手助けとなれば幸いです。