スターリンク、テレビアンテナ、LAN、防犯カメラなどの工事では、屋外から室内へケーブルを引き込むために、外壁を貫通させることがあります。
お客様からすると、建物の壁に穴をあけることは、工事の中でも特に心配になりやすい部分です。
「雨水が入らないか」「壁の中で結露しないか」「断熱材を傷めないか」「室内に風や虫が入ってこないか」といった不安を持たれるのは、当然のことだと思います。
外壁貫通工事は、単に穴をあけてケーブルを通し、外側にコーキングを施工すれば完了するものではありません。
建物の構造、外壁材、通気層、断熱材、防水層、気密層などを確認し、それぞれの層に応じた処理を行う必要があります。
本記事では、一般的な通気層のあるサイディング壁を例に、株式会社クラウンクラウンが行っている外壁貫通工事の考え方と施工方法をご紹介します。
なお、実際の施工方法は、建物の構造、使用されている断熱材、外壁材、下地、防水シート、配線経路などによって異なります。
一般的な木造住宅の外壁は、屋外側から順に、次のような複数の層で構成されています。
外壁に穴をあけるということは、これらの層を横断して屋外と室内をつなぐことになります。
処理が不十分な場合、雨水だけでなく、通気層の空気、外気、湿気、虫などが壁の内部や室内に入り込む経路になる可能性があります。
そのため当社では、屋外側だけを塞ぐのではなく、外壁側、断熱・気密層、室内側のそれぞれで隙間を処理することを重視しています。
通気層のある外壁を貫通する場合、当社では基本的に、太めの樹脂製全ねじパイプと専用ナットを使用します。
全ねじパイプは、壁を貫通するスリーブとして使用する部材です。パイプ全体にねじ山があるため、ナットの位置を調整しながら、外壁側や室内側を固定できます。
外壁部分では、原則として2つのナットで壁を挟み込むように固定します。
これにより、次のような効果が期待できます。
壁の中へケーブルだけを直接通す方法と比べ、貫通部分の形状と位置を維持しやすく、将来のメンテナンスにも対応しやすい施工です。
日本の木造住宅では、袋入りグラスウールが多く使われています。
袋入りグラスウールは、グラスウールを薄いフィルムで包んだ断熱材です。
この部分へそのままドリルを通すと、回転するドリルにフィルムやグラスウールが巻き込まれることがあります。
巻き込みが発生すると、断熱材が穴の周囲へ引っ張られたり、偏ったり、内部で大きく乱れたりする可能性があります。
そのため当社では、可能な限り断熱材を直接ドリルで貫通させない施工を行います。
施工条件が許す場合は、柱のすぐ横など、壁の中へ手を入れて作業できる位置に、コンセントプレート程度の大きさの開口を設けます。
既存のコンセントや情報コンセントが適切な位置にある場合は、そのプレートを一時的に外し、既存の開口から作業することもあります。
作業用開口から断熱材の位置を確認し、必要に応じて一時的に避けたうえで、外壁側へ穴をあけます。
この方法であれば、断熱材を巻き込むリスクを抑えながら、壁の内部を確認して施工できます。
開口前には、柱、間柱、電気配線、給排水管、既存の通信配線などの位置を確認する必要があります。
穴あけ位置の制限や建物の構造によっては、どうしても断熱材を貫通させなければならない場合があります。
この場合も、断熱材へそのままドリルを押し込むのではなく、室内側から断熱材のフィルムとグラスウールを丁寧に切り開き、ドリルが断熱材を巻き込まない状態を作ってから穴をあけます。
全ねじパイプを通した後は、切り開いた断熱材や気密層を気密テープで補修します。
さらに、室内側のナットで補修面を押さえ、断熱材、気密テープ、全ねじパイプがばらばらに動きにくい状態に仕上げます。
単にパイプを通すだけではなく、断熱材と気密層を可能な限り元の状態へ戻すことが重要です。
全ねじパイプやナットの周囲には、シーリング材を施工します。
当社では、施工場所や周囲の素材に応じて、主に次の材料を使い分けています。
当社では、多くの場所でレクセルクリアを使用しています。
レクセルは合成ゴムポリマー系のシーラントで、クリアタイプは透明度が高く、施工部分が目立ちにくいことが特徴です。
透明なため、外壁やボックス、ナットの色を大きく損なわずに施工でき、意匠性を保ちやすいという利点があります。
一方で、すべての素材に適しているわけではありません。
ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなど、使用に適さない、または十分な接着性を得にくい素材があります。
スチロール系断熱材や相性が確認できない樹脂の近くでは、変成シリコーン系シーリング材など、周囲の材料に適した製品を選定します。
シーリング材は、見た目だけでなく、接着対象、可塑剤、塗装の有無、温度、湿度、紫外線、将来の補修方法まで考えて選ぶ必要があります。
一般的な施工例では、主に次の2~3か所にシーリング材を施工します。
屋外側だけでなく、壁の内部や室内側でも隙間を処理することで、防水性と気密性を確保しやすくなります。
なお、シーリング材はナット全体を覆うように盛るのではなく、基本的にはナットと母材、またはナットとパイプの間にある隙間へ施工します。
将来ナットを取り外したり、ケーブルを交換したりする可能性も考え、必要な部分を確実に処理します。
スターリンクなどのケーブルを室内へ直接引き込む場合、室内側の仕上げに「テレホンガイド」と呼ばれる部材を使用することがあります。
テレホンガイドは、壁の中からケーブルを緩やかに取り出すための部材です。
ただし、テレホンガイドはケーブルを通すための開口があるため、壁の中と室内が完全には分離されません。
建物の構造や風圧の状況によっては、テレホンガイドの開口から、壁の中の空気が室内へ流れ込むことがあります。
そこで当社では、原則として石膏ボードの内側に防気カバーを設置します。
防気カバーは、コンセントボックスや開口部の背面を覆い、壁の中の空気が室内へ流れ込むことを抑えるための部材です。
防気カバー自体が全ねじパイプや室内側ナットに直接接触する構造ではなく、ナットより室内側に独立して設置します。
防気カバーを使用することで、次のような効果が期待できます。
防気カバーの設置は、当社の標準的な外壁貫通工事に含めています。
屋外側の貫通パイプは、防水ボックスや防雨入線カバーで受けます。
スターリンク工事の場合、防水ボックスの下部へ防水コネクターを取り付け、耐候性のあるPFD管へ接続します。
PFD管は、屋外で使用できる二層構造の合成樹脂製可とう電線管です。
スターリンクケーブルを露出したまま配線するのではなく、PFD管へ収めることで、次のようなリスクを抑えます。
配管の固定間隔、曲げ半径、水抜き、接続部の向きなども考慮して施工します。
全ねじパイプの中へケーブルを通した後は、ケーブルとパイプの隙間をパテで埋めます。
このパテには、主に次の役割があります。
貫通部をすべて硬化するシーリング材で固定してしまうと、将来ケーブルを交換するときに取り外しが難しくなります。
取り外し可能なパテを使用すれば、将来のケーブル交換や追加配線にも対応できます。
室内側は、原則としてコンセントプレートを使用して仕上げます。
スターリンクケーブルの場合は、コネクターの形状やケーブルの太さを考慮し、テレホンガイドからケーブルを取り出すことが多くなります。
一方、アンテナ線やLANケーブルの場合は、壁面端子へ加工して仕上げることをお勧めしています。
壁面端子にすることで、次のようなメリットがあります。
防犯カメラ用のLAN配線でも、屋外側から室内側へ貫通させ、室内側をLANジャックとして仕上げることがあります。
特殊な施工例として、建物の外壁に設置したボックスから、地中配管を経由してスッキリポールまで配線する場合があります。
例えば、建物とスッキリポールの間に通信ケーブルを通す場合、次のような経路を構成します。
このような施工では、防水だけでなく、埋設深さ、配管径、曲げ、通線距離、排水、ケーブル交換のしやすさなどを含めて設計します。
外壁貫通工事は、完成すると防水ボックスやコンセントプレートしか見えません。
しかし、本当に重要なのは、完成後には見えなくなる壁の内部です。
これらを一つずつ処理することで、建物への影響を抑えながら、長く安心して使用できる配線になります。
当社では、外壁に穴をあけること自体を特別に難しい工事として不安をあおるのではなく、建物の構造を確認し、必要な処理を一つずつ丁寧に行うことを大切にしています。
スターリンク、テレビアンテナ、LAN、防犯カメラなどの外壁貫通工事についてご不安がある場合は、建物の図面や施工予定箇所の写真を確認したうえで、適切な施工方法をご提案します。