まず大前提として、ブースターは電波を強くするものですが、品質を良くするものではないと考えたほうがいいでしょう。もともと直接テレビにつないでも受信できないレベルの電波では、基本的にはブースターを使ったところで映るようになることはありません。
建物内で分配されたり、アンテナ線を長く引くことにより減衰する(弱くなる)電波に、あらかじめ余力を与えると考える方が正しいです。ですが、これはいくらでも強くできるわけではなく、ブースターには定格出力というものがあります。この定格出力を超えてしまうと、ノイズが大きくなり結局安定した受信ができなくなります。そのためブースターは適切な場所に、適切な調整を行って設置する必要があります。
どのくらいの強さ、品質の電波がチューナーに入力できれば問題ないか、また同様にどの程度の強さ、品質の電波が壁のテレビ端子で必要かをまとめたデータがあります。
推奨値と実際に受信できる値では違いがありますが、実際に視聴できるレベルで言うと
地デジで34dBμV、MER22dB、BER0.0002以下が最低ラインです。(※チューナー入力レベル)
JEITAでは推奨条件として46dBμV~89dBμVとしています。
ここから逆算していきますが、壁端子~テレビチューナーまでで電波の強さが3~5dBμV程度落ちます。
また季節や天候の変化でそもそもの受信レベルが6dB程度変動すると言われています。
そのため最低で壁端子で57dBμV以上の電波レベルが望ましいでしょう。
JEITAの資料によると、5分配器を通り30m先に2口の壁端子があり、分配器からブースターまで10mの配線があった場合、地デジの電波はこの経路だけで20~22dBの減衰があります。つまり、ブースター設置場所(アンテナ直下10m先と想定)で79dBμVの電波強度が望ましいと考えられます。
アンテナ直下0mではさらに1.5dBの損失が起こる前なので、アンテナ直下測定で80dBμVというのがブースター不要の数値と計算できます。
実際にはアンテナ線の長さや使用している分配器、壁端子等によっても変わってくるので60dBμV以上はお客さまと相談、としています。
BSアンテナが絡んでくると話はまた変わってきます。BSアンテナはどの家に設置してもしっかり設置できていれば受信レベルはほぼ変わりません。
ですから基本的には分配数などの経路部分のみで考えられるのですが、地デジアンテナと決定的に異なるのは、BSアンテナは電気が流れていないと電波を送れないという点です。
BSアンテナの先端はコンバーターという機器が設置されており、宇宙の衛星から届いた高周波を家庭用の周波数に変換する機能を持っています。そのため電機が必要なのですが、ブースターを設置した場合はブースターから安定して電気を流すことができます。ブースターを設置しなかった場合はテレビなどから「BS電源」をONにして電気を流す必要があります。
ここで問題になるのが、第一にこの経路で電気が流せるかどうかです。途中、壁のテレビ端子が電流通過型(電源挿入型などともいう)ではなかった場合、この端子を交換しなくてはいけません。また分配器が1端子電流通過型だった場合、電流通過端子以外につながっていたなら、配線の組み換えをしなくてはいけません。もちろんテストを行う手間がかかりますので、当社の場合はこの作業は有料です。
第二に複数の場所でBS放送を視聴する場合です。電気が流せるかどうかの問題で言うと、分配器が1端子電流通過型だった場合、BSを視聴するときには電流通過端子につながっているテレビなどから常にBS電源が送られている必要があります。レコーダーなどには常時電源ONの設定がありますが、テレビの場合は「そのテレビでBSを視聴、もしくはHDDに録画している時だけ電気を流す設定」しかないことも多いです。
その場合は、各テレビが見る時それぞれ電気を流せるように、分配器を全端子電流通過型に置き換えるのですが、同時に複数個所から電気が流れた場合にテレビがエラーで止まってしまうことがあります。
理想としてはブースターのように、一つの特定の機器から常にBS電源を送り続けることですが、例えばそれがレコーダーだった場合、レコーダーを外してしまうと別途何かしらの処置が必要になったり、工事後にも手間がかかってしまうことがあります。
そのため、BSについては3分配移譲されている場合は原則としてブースターを設置することを強く推奨しています。